中学生の部

佳作

初めてのお化粧
学校法人市川学園 市川中学校 2年 山本 美佳やまもと みか

 「化粧ってするものなんだ」。友達が化粧をして遊びに行くと知り、私は新たな世界に驚き、未知のものに触れた気がした。友達がしているんだから、私もしてみようと思ったが、親に化粧に興味があることを知られるのが恥ずかしかった。自分なりに調べてみると、さまざまな道具が必要だと分かったが、どれも高価で買うことができない。百円ショップで化粧品をそろえることができるという情報を得た私は、期待で胸をふくらませながら、リップやアイシャドウ、ファンデーションなど一式買いそろえてみた。嬉しくて大人の仲間入りをしたような気持ちになった。
 早速使い方を調べ、見よう見まねで化粧をしてみた。動画を見ながらの初めての化粧にうきうきしていた。まるで、ヨーロッパの貴族になったようだ。化粧が終わり、改めて自分の顔を見た時、驚きのあまり鏡の前で固まってしまった。目は紫のアイシャドウでギラギラ、口は真っ赤なリップでまるで歌舞伎かぶき役者、顔は日焼けとパウダーでまだらになり、パンダみたい。ピンクのほほはまるでオカメインコだ。こんな顔で外は歩けない。これはまずいと思った。
 どうにかしようとしていると、母が背後から現れ「すごい顔だね」と言われてしまった。さらに、追いうちをかけるように「どう化粧したらそうなるの」と嫌味を言われ、頭にレンガが落ちたような衝撃を受けた。母は、中学生に化粧は必要なく、外見より中身を磨くべきだと言う。しかし、世間では第一印象は大事だと言うではないか。私は、母の意見も分からなくはないが外見も大切なはずだと反発する気持ちになった。
 後日、母とデパートに買い物へ行くと、売り場に沢山の高級化粧品が並んでいた。母に、「一度お化粧を試してみる?」と聞かれ、店員さんにも勧められた私は、少しためらいながら、いすに座った。美人の店員さんに、あこがれのつまったキラキラの化粧品で、きれいに化粧をしてもらった。鏡の中には、肌が白く、目元がはっきりとして、自然ではつらつとした私がいた。まるで生まれ変わったようでとても嬉しかった。店員さんから、「中学生はポイントメイクで十分かわいいですよ」と言われ、自分に合った化粧の仕方を知ることができた。その日買ってもらったリップは私の宝物になった。
 自分を磨くとはどんな事だろう。この答えはまだ私の中で見つかっていない。大人は外見よりも中身が重要だと言う。もちろんそれも分かるが、おしゃれして、もっと外見も磨いてみたい。さまざまな化粧の仕方があるように自分のあり方も沢山ある。自分のあり方は人生の中で変化していく。これからも答えがない事は人生で沢山あるだろう。私はその都度つど考え、自分なりの答えを探しながら生きてゆきたい。私の物語はまだ始まりにすぎない。生きてゆく私はこの物語を更新していく。

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