中学生の部

佳作

夏休みが始まった。
八幡市立男山第二中学校 2年 後藤 壮太ごとう そうた

 ついに待ちに待った夏休みだ。中学二年の夏。青春まっさかりファイアー。地獄の学期末テストをなんとか乗り越え、五教科はいまいちだったが、美術・音楽・技術家庭科で高得点を叩き出した通知表を手に、僕の心はどこまでも飛んでいきそうなくらいに軽かった。
 これから始まる30日以上の休みをどう過ごそうか。友達とプールに行こうか。映画に行くのも良い。毎日、昼過ぎまで好きなだけ寝ることだって出来る。
 しかし僕はすぐに現実に引き戻されることになる。
 僕はサッカーのクラブチームに所属している。クラブチームはサッカーを真剣にやりたい人が集まっている所であるから、普段も週5で活動があり、土日も毎週のように試合がある。そのため、夏休みも待っていましたとばかりに、もちろんギッシリと試合の予定で埋めつくされているのであった。
 まず初日から吹田すいたで練習試合、次の日は生駒いこまで公式戦、練習、練習、ときて河内長野かわちながので3日間の遠征だ。そして砂漠の中のオアシス的な休みが1日だけあり、また練習、南津守みなみつもり舞洲まいしまで公式戦2日、高槻たかつきで3日間のサッカーフェス、岡山合宿と怒濤どとうの日々が待ち受けていた。
 今年の夏も37度と気温が高いが、試合はおかまいなしに太陽が頭上で照りつける時間にも入っている。まぶしい日差しどころではない。ときには5時に起きて、大荷物を抱えてバスに乗り、炎天下の中を走りに走り、チームメイトのミスに大声で指示を出した後すぐに、自分のミスで失点しコーチには怒鳴られ、精神的にも疲労し、3日連続で朝から夕方まで試合をした後に意地で行ったガンバ大阪対レアル・ソシエダの帰りには、さすがの僕たちも疲れ果て、死んだ魚のような目で夜10時の電車に揺られていた。
 夏前は健康的だった僕の肌は、小麦色を通り越して、黒焦くろこげになった。そして僕の肌が一皮むける頃、夏休みも残り2週間になっていたのである。
 やばい。
 急に心臓がきゅっと痛くなる。思い浮かべるだけで過呼吸になりそうになるそれは、カバンの奥深くに眠っている「宿題」である。
 「夏休みの宿題一覧」というB5の紙。恐怖の怪物の全容を改めて確認するときがきた。国語は、読書・作文・漢字24~31ページ。次に社会、ワーク57ページ・人権作文。11科目中の2科目ですでに作文が2つも登場するという事態だ。まだまだ続く一覧表の先を読むのが怖い。チームには英語が満点というやつもいるが、僕は38点だ。そんなやつはもちろん宿題だってやってない。後悔先に立たずだが、とにかくなにか手をつけねばならない。
 途方に暮れていたその時、携帯が鳴った。
「宿題、どこまでやった?」
 友よ、お前もか。僕らの宿題が、今始まる。

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