僕は、クラブチームでサッカーのゴールキーパーをしている。キーパーをやり始めたのは、ある出来事があったからだ。僕がキーパーを好きになった、その「はじまり」の出来事を書いていこうと思う。
日本でサッカーのキーパーというと、どのようなイメージがあるだろうか? 得点を決めるストライカーと比べると、地味なポジションというイメージがあるだろう。それなのに絶対にミスが許されない。失点すれば責められ、止めてもそこまでほめられない。今自分で書いていても、キーパーは何て残念なポジションなのだろうと悲しくなってくる。
日本では小学校低学年の頃は、キーパーはローテーションで全員で交代で担当することが多い。なぜなら、自らキーパーを率先してやる子がいないからだ。キーパーになった際に泣きだしてしまう子もいた。そんな人気のないポジションをどうして僕がやろうと思ったのか。それは今から四年前に遡る。
小学校四年生の時、所属していたサッカーチームで大きな大会に出場した。その大会で優勝することを目標にずっと練習をしてきた。僕は他の子よりも背が高かったこと、キーパーがそこまで嫌ではなかったことから、この大会でキーパーをやることになった。決勝戦まで、フィールドの選手たちのおかげで一度もシュートがこなかった。圧倒的な点差で勝っていくのは嬉しいが、フィールドの選手たちが少し羨ましかった。そんな中迎えた決勝戦。今までの試合と違い、立ち上がりから攻められ続ける試合展開になった。そんな中、前半終了間際に相手選手と僕の一対一の場面が作られた。ゴール隅に打たれたシュートをギリギリ指先で弾き出した。そこから試合の流れが変わり、今度はこちらが攻める展開に。その後、終始相手チームを圧倒し、勝利した。
大会の表彰式で優勝チームとして表彰され、すごく嬉しかった。その時だった。大会MVPが発表され、僕の名前が呼ばれた。まさか自分の名前が呼ばれるとは思ってもなく、聞き間違えではないかと思った。この大会MVPは、優勝チームの監督がチームから一人を選出するものだった。僕はこの大会を通して大きなシュートストップはあの一回だけだった。フィールドの選手たちは一人で五点取った選手もいて、普通に考えたらその子がMVPだっただろう。だが監督は、僕があのシュートを止めていなければ、決勝戦は負けていたかもしれない、あのシュートストップが試合を決めたと評価してくれた。自分のプレーを評価してもらえたことがとても嬉しかったし、キーパーでも試合を動かすことが出来ることを感じた。
このMVPが、僕のキーパーとしての「はじまり」だった。今でもキーパーは損なポジションで辛いと感じることもあるが、この出来事を通して得た自信が今も僕を支えてくれている。