「ガタンゴトンシュー」
枚方駅に着いた。電車から降りると、目に見えるもの全てが人だった。そんな中、何か困っているおばあさんがいるのが見えた。
おばあさんはつえを落としてしまったらしく、必死に捨おうとしているようだった。そのつえを見ると、目の不自由な人が持っているような白いつえだった。「たぶん障害者」─── そう思ってつえを捨ってあげると、
「ありがとう」
その一言だけがぼくに伝えられた。「どうせなら駅のホームまで送ってあげようかな」。そう思い、おばあさんをホームまでおくってあげることにした。ぼくが乗る予定の帰りのバスの時間がせまってきていたので、おばあさんをおくり終わった後すぐさまバスターミナルに行こうとした。
しゅん間ぼくの手が何かに包まれた。ふり返ると、おばあさんがぼくの手をぎゅっとにぎりしめていた。そしておばあさんの口から、
「本当にありがとう。あなたは私の恩人だよ」
と告げられた。ぼくは、
「お役に立てて本当によかったです」
という一言だけしか言えなかった。時間がなかったのではなく、ぼくが言おうとしなかった。理由は自分でもわからない。
ただその時、ぼくはおばあさんが笑顔で感謝しているところに気がいってしまっていた。
理由は簡単。これがぼくのあかの他人、いや障害者から感謝された初めての経験だったからだ。バスに乗った後もとってもうれしかった。とっても興奮した。
この経験を経てぼくはこれから助けるか助けないかの判断はもちろん必要だ、でも助けないという否定からはいるのはよくないと思う。
だから自分のできるはんいで、困っている人を手助けしたいと考えた。