僕は小学三年生から雲にときめいている。きっかけは雲の色から天気を予想できないかと考えたことだった。その疑問を解き明かすためにその年の夏から秋にかけて研究に没頭した。研究を進めていくうちに、僕の興味は大雨を降らせる雲の動きや、水害対策へと広がっていった。
僕が住んでいる東京都江戸川区は、海抜ゼロメートル地帯と呼ばれる地域が多い。一度堤防が決壊するような水害が起こると、二週間程度、町が湖のようになってしまうということを知った。
このことを多くの人に知らせるためにレポートを作成し、コンクールに応募することにした。実際の避難の厳しさを伝えるために、猛暑の中、重い防災リュックを背負って、家から約五キロメートルの位置にある高台の避難場所に向かってみたり、水害発生時を想定し、水の中を歩き、その難しさを実証したりした。避難所となる小学校の備蓄状況を検証し、防災リュックの中身を提案した。
その後、令和元年東日本台風が上陸した。僕のレポートを読んでくれた方々から「実際の避難の時にとても役立つ情報だった」と言われたことをきっかけに、さらに僕のできることを考えた。コンクールで区長賞を受賞すればレポートのレプリカが複数作成され、地域の図書館で多くの人の目に留まる。多くの人の目に留まれば、防災の知識をもっと多くの人に広めることができると僕は考えた。
そのために、気象予報士の先生や江戸川区危機管理部の方々、地域水害の研究家の方にインタビューした。また、過去に甚大な被害をもたらした台風の共通点を見つけ、事前に危険を察知することの重要性や広域避難の必要性を提案した。約三年間の研究が実を結び、無事に区長賞を受賞し、僕のレポートは図書館に展示された。図書館で多くの人に見てもらい、防災の参考にしてもらいたい。
中学生となった今では、地学部に所属し、気象について勉強しながらきれいな雲を撮影し、写真集を作っている。写真を見て雲や天気に関心を持つ人が少しでも増えてほしい。
雲にときめいたことで、ひとつの事象を深く研究することの楽しさを知れた。研究したことによって、人の役に立つことの嬉しさを知ることができた。将来は気象予報士の資格を取得するという目標を持つことができた。
物事にときめく時間は短い。しかし、そのときめきから一歩踏み出すことによって、新しい発見や疑問を生み出すことができる。そのときめきの積み重ねが今も続いている。つまりときめきは僕の研究の原動力なのだ。