小学生の部

佳作

いつもありがとう
八幡市立美濃山小学校 6年 森山 結菜もりやま ゆいな

 私は今、風呂洗いをしている。ふだんまったくお手伝いをしない私がそんなことをしているのには、こんなわけがある。
 その日は妹が水泳の大会だった。母と父は二人そろって妹の応えんに行った。行く前に母はこう言ったのだ。「今日は、七時ぐらいに帰ってくるから洗たく物しといてな。これとあれもお願い‼」と母はありとあらゆる家事を私におしつけた。私のテンションは急激に下がっていった。せっかく家を自由に使える楽しい一日になると思っていたのに‼ 家事のせいで台無しである。でもそう思っている時間も、もったいない。私は気をとりなおして、さっさと家事を終わらせることにした。
 まずは、食器洗い。はっきり言うと、人の食べカスを洗うのは気持ち悪い。ごはんつぶが手にひっつくこともある。洗たく物を干すときには服やくつ下、ありとあらゆるものが裏返っていた。全てなおしているうちに、三十分もたっていた。あぁ。めんどくさかった‼ ここで私は、はっと気づいた。いつも洗たく物を干してくれているのは「親」であり、いつも服を裏返したままにしているのは「私」ということに。今は立場が逆転しているだけだったのだ。そして家事が全て終わったころにはもう、十二時をまわっていた。
 何時間かたつと、大会から母と父と妹が帰ってきた。一日中家事をしたからか、母と父がいつもの二倍、かがやいて見えた。そして二人はこう言った。「お手伝いありがとう」と。この一言で私の心は満たされた。それと同時にいつも文句一つ言わずに家事をこなす二人はすごいな、こんなふうな大人になりたいな、と。これが私のひそかな願いなのだ。たまにはお手伝い、してみようかな。

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