小学生の部

佳作

祖父が教えてくれたこと
八幡市立美濃山小学校 6年 新林 萌々香しんばやし ももか

 「チーン」と、りんを鳴らす音が部屋中にひびき、大切なことを思い出させる。
 私がまだ三年生の時のことだ。母のけいたいがとつぜんピロピロと鳴った。母は電話に出て、しばらく話していたが、急にぱっと周りの空気が重くなった。母は電話を切ると、あわてて「急いで病院にいくよ」と言った。
 いやな空気がただよい、心臓がドキドキと鳴る中、私達は急いで準備し、病院に行ったのだが……。そこで初めて祖父がこの世からいなくなったという事実を知った。ほほから流れる水は、夜までやむことはなかった。
 祖父は太陽のように明るい人で、ガンになっているにもかかわらず、私には笑顔で接してくれた。お話をしてくれたり、キャッチボールをしたり、けして忘れることはないだろう。祖父に会った最後の日の、帰りぎわには「バイバイタッチ‼」とぶ厚く温かい手と元気よくタッチしたことは、今でも目に焼きついている。
 前までいた家族がこの世からいなくなるなんて考えたことが無かった。私はその時初めて家族というかけがえのない存在の温かさに気がついたのかもしれない。そして、一人暮らしになった祖母を大切にしようという気持ちがあふれでてきた。
 そんな家族の温かさに気づいた私は、これからも祖母との時間をいつも以上に大切にしたい。長生きできるよう、幸せにくらしていけるように。
 そのことを忘れた時も、仏壇におがみ、りんの鳴る音を聞くと、まるで祖父が思い出させてくれるように、大切なことを思い出すんだ。

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