「もしもし。元気?」
一週間に一回ぐらい、僕はひいおばあちゃんに電話をかける。
ひいおばあちゃんは、耳が遠いから会話がかみあわないこともあるけど、元気な声が聞けると、僕は安心する。
今年六月、僕のおじさんが亡くなった。おじさんは僕のおじいちゃんの弟で、ひいおばあちゃんの末っ子である。がんが見つかった時には、もうかなり進行していて、本当にあっという間に亡くなってしまった。だから、みんな心の準備ができていなかった。
子供が親より先に亡くなることを、「逆縁」というそうだ。ひいおばあちゃんは、長生きしている分、これまでたくさんの人を見送ってきた。だけど、おじさんの死は本当にショックだったそうだ。だから、おじさんの死を聞かされた時は、その場に座り込んでしまい、しばらく立ち上がれなくなったそうだ。
ひいおばあちゃんは、お葬式の時に、「何で先に行くんや」といって、とても悲しんでいた。ひいおばあちゃんが、体調を崩してしまうのではないかと思って、僕はとても心配していた。
あれから三か月。四十九日や納骨も終わって、今では静かな毎日を過ごしている。お盆にひいおばあちゃんの家に遊びに行くと、籠いっぱいに自分が育てたナスやきゅうり、トマトをとってくれた。ひいおばあちゃんの悲しい気持ちは、少しは癒えただろうか。元気そうにしているけど、さみしい気持ちになっていないだろうか。
ひいおばあちゃんは、僕が生まれたときに百三十キロ離れた家から真っ先に駆けつけてくれた。そして、今まで数えきれないぐらい僕に「大好き」と言ってくれた。そんなひいおばあちゃんが、僕も大好きだ。「ひいおばあちゃんの悲しみが少しずつ癒えて、元気に長生きをしてくれますように」。それが今の僕の願いである。