私は小学六年生にして「あきらめること」を覚えた。努力することをあきらめた訳ではない。言いかえれば「いじをはること」をあきらめたということになる。私が「あきらめること」を覚えたきっかけは、心の成長と母とのケンカだった。
「なんなんよ。ママには関係ないやんか。私のこと一つも分かってへんくせに口つっこまんといてや」
ほぼ毎日のようにこのような言い合いをしていた。たぶん反抗期のせいだろう。反抗期のはじまりは、母が私に人生最大と言ってもいいほどのかくしごとをしたことだった。私はこのことをきっかけに母をきらい、母のような人間にはなりたくないと思った。父がいないため、ケンカの間に入ってくれる人もいなければ相談できる人も少ない。ゆいいつ相談できるのはおばさん、通称「ねぇね」だ。私には「いじ」を張るくせがある。素直になればいいのになれない。そういうこともすべて打ち明けられる。
ある日、親せきとご飯を食べに行った。そこでねぇねにこう言われた。
「ママも辛いんやし、分かってあげてや」
私はこの言葉を聞いてママにたくさん、ひどいことを言ったなと思った。いつも私が何を言っても泣くことはなかった。でも私がいない所で辛い思いをしているのかなと思うと、申し分けなくなった。だからこれからはいじを張ることをやめようと思った。
でも、どうしても強く言ってしまう。そんな時は一旦おちついてお母さんの気持ちを想像することにした。そうすることで、少しのことで腹を立てたり、大声でどなることがとても減った。むしろ笑っていることの方が多くなった。私はこれからの人生、笑うことが一番の宝物だと思った。