トコトコ、テクテク。今、私がふんでいるこの地面は、大胆に言えば、日本の大地の一部。当たり前のことだと思うが、六年前は実感できなかった事実だ。
六年前、私は韓国から日本に引っこすことになり、韓国の大地をあとにした。その時はほぼ一年生にもなっていなかったので、何も分からなかった。通りすぎる人たちが皆日本語をしゃべっていて、何を言っているのか分からない。そう、私は外国人になったのだ。
幼稚園の子たちと話したり、仲良くしたりするうちに、私は日本語を少しずつ分かるようになっていた。そうだ。今私はこの手で随筆を書いているではないか!! 関西弁をペラペラしゃっべっているではないか!!
三年前ぐらいは、あまりにもペラペラしゃべっているもので、よく、
「日本人なの? 苗字が『一つ』だけど」
と、そういう風に言われる。言われるときは、なぜか答えたくないなーとか、はずかしいなーごまかそっかなーとか思いながらも、
「ん? ちがうよ。韓国人だよ」
と言う。このしゅん間がイヤ。だって……
「じゃあ、韓国語、しゃべってよ」
と言われる。キタキタキタキタ。イヤだー!! きまってそう思う。
あ、でも、この話は三年前のエピソードであって、今はちがう。性格が変わってしまったのだろうか。最近は、
「禹っていう苗字はな、中国の王が祖先やったんやで」
という、じまん風に言ってみたりする。なんか、ずっと日本にいたせいか、自分の国のことがなぜか不思議に思える。三年前のはずかしかった苗字も、今は大丈夫。これから私はもっともっと国を好きになれそうな気がしたし、もっと国のことを大事に思えるようにがんばれる気がした。