中学生の部

優秀賞

パズル
佐渡市立松ケ崎中学校 3年 中平 夏鈴なかひら かりん

 小学校に入学したとき、私には同級生は一人もいなかった。小学校は複式学級だったので、一年生のうちは二人の二年生に頼って生活していればよかった。
 ところが、二年生になった時、一年生が五人も入学してきたのだ。すると、任される仕事の量は格段に増した。学校での過ごし方など、一つひとつ教えることは大変だった反面、誰かに必要とされ、任されていることがうれしかったのを覚えている。
 ところが、三年生の時の地域のそば会で、ある事件は起こった。私がそばを打っていると、見知らぬ女の子が入ってきて、突然その子――Iちゃん――が私の「同級生」だと告げられたのだ。突然すぎる出来事に、私の心臓はバクバクした。
 大人に言われるままに、私たちは自己紹介をして、皆が見ている中で握手をした。二人とも緊張していた。ぎこちないあの握手の感触を、私は今も忘れていない。
 私たちはその日のうちに打ち解け、散歩やお話をした。同級生の存在が私には新しく、なんだかとても不思議な感じがした。
 その日からIちゃんが転校してくるまで、二ヶ月程の時間が空いた。すると、思いがけないことに、期待よりも恐怖の方が大きくなってきた。今までの私は、誰かと比べられたことがなく、常に自分が一番だったからだ。幸い、実際に二人になったことで失われたものはなかった。目の前がぱあっと明るくなったかのように、毎日がとても楽しかった。
 ところが、六年生の運動会で、またもや事件が起こった。男子が一人転校してきたのだ。二回目の経験だったため、不安は少なかったが、はじめての男子の同級生だったこともあり、接し方が分からなかった。Sさんはとても静かで落ち着いてついていて、私と全く違うタイプだったことも悩みを深くした。お互いを知らなかったため、私からグイグイ話すことも難しかった。
 しかし、転機が訪れた。二年生になった頃、Iちゃんの体調が優れず、学校に来られない日が多くなったのだ。教室には二人きり。その時に私は、もっとSさんと向き合い、会話を交わさなければいけないと気づかされた。
 Sさんも同じことを考えていた。互いを気遣い、フォローするきっかけがあったことで、Sさんとの関係だけでなく、クラスの雰囲気まで徐々に良くなっていった。
 私はふと、小学生の頃の先生からかけてもらった言葉を思い出した。「まるで足りないピースが埋まり、一つのパズルが完成するようだね」と。広い世界で巡り合った三人は奇跡だったんだと、改めて感じることができた。
 二人と出会ったことで、私は大きく変わることができた。一人では気づけなかった新たな価値観に出会うことができたのだ。
 私たち三人は、それぞれが違う個性や良い部分を持っている。一人でも欠けてはパズルは完成しない。しかし、まだピースは一つの場所に集まっただけ。今日から卒業までの時間、互いの長所も短所も理解して、決して崩れない、私たち色のパズルを完成させたい。

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