「はあむ」
私は口を大きくあけて、光輝く春巻きを頬張った。しっとりな皮に歯を立てると、中からとろとろな餡が出てくる。一口大のタケノコがアクセントを加える。ごくん。
「お、おいしすぎる」
ぷっ、と声が聞こえた。
「相変わらず、幸せそうに食べるね」
仲の良い友達だ。
「私、春巻きそんなに好きじゃないから」
彼女はそう言い、光輝くそれを私に差し出した。
「えっ、いいの」
こんなに美味しい物を、という顔をしたが、彼女は「いいよ」としか言わなかった。
学校の帰り道、私は考えていた。春巻きは、私の大好物。
でも彼女には苦手な物。好き嫌いはあるが、私はどうにか彼女と「幸せ」を共有したかった。私が春巻きを食べる以外に幸せな事はたくさんある。
「よし、幸せ探しをしよう」
幸せ探しをして、彼女と幸せを共有する。それを目標にして、私は家に帰った。
「ただいまあ」
彼女と共有できる幸せを見つけるには、私の幸せを探さなくちゃならない。
「とりあえず、探してみよう」
音楽、ゲーム等々。見つかる限り探した結果、もう三十分が過ぎていた。
「色々探してみたけど、どれもしっくりこないなぁ。どうしよう」
まだ探したい気持ちはあるが、もう夜の十時。そろそろ寝る時間だ。私は中途半端な気持ちのまま、目を瞑った。
朝、体を起こし、制服に腕を通す。体が重いまま、学校へと向かった。
席に着くと同時に、彼女がすぐ駆け寄ってくる。
「おはよう、なんか顔色悪いよ」
「そ、そうかな。でも大丈夫だよ。心配しないで」
すると彼女はむっとして言った。
「葵ちゃんが大丈夫って言う時は、絶対大丈夫じゃないの、知ってるよ」
図星だ。私は諦めて、本当を話した。
「実は昨日の春巻きの事から、二人で共有できる幸せを見つけたかったんだけど、見つからなかったんだ。ごめんね」
しばらく無言が続いた後、彼女は微笑んで言った。
「私は、葵ちゃんと話してるだけでとっても幸せだよ」
思いも付かない言葉だったが、すぐ彼女の言葉に納得した。私は、大切な事を忘れていたんだ。大切な友達と話す事が、一番の共有できる幸せなんだ。私は顔を上げ、満面の笑みで言った。
「私も」