私は幼い頃から絵を描いたり、物を作ったりする事が好きだった。絵を描く時は周りが見えなくなるほど夢中になり、学校では顔を上げると誰も居なかったり、ご飯を食べるのも忘れるくらいだった。それくらい描く事は私にとって幸せだった。
中学生になり、進路や勉強と向き合っていかなければいけなくなり、絵を描く時間が少し減りつつあったが、それでも時間があれば作品を作っていた。
今年学校の担任の先生にすすめてもらい、美術の高校のオープンスクールへ母と電車で向かった。
私の向かった高校は昔ながらの古い建物で、廊下の床が木でできていた。母は「お母さんの通っていた学校もこんな匂いだった」と懐かしがりながらそう言っていた。歩くたびに床が「ギシッ」となり、こんな歴史を感じる学校へ来たことがなかったのでとても新鮮に感じ「このレトロ感最高!」と思った。なんだか初めて感じるドキドキ感だった。
そして個性豊かな高校生の方に迎えてもらい、この場所にいると自分も仲間入りしたい、という思いが強くなった。先輩方の展示されている作品の数々を見て心が踊っていた。これを描きたい。これはどうやって作ってあるのだろうと私を虜にした。
この高校では、日本画、洋画、彫刻、漆芸、陶芸、染織、デザイン、ファッションアートの八専攻に分かれて専門美術を学ぶそうだ。その中の二つを体験させてもらった。私はファッションアートとデザインを選んだ。
ファッションアートでは画用紙を好きな形に切り抜き、その形をカバンにアクリル絵の具で色を塗り、布や小物を飾っていくというものだった。私は蝶を切り抜き、グラデーションで色を塗った。他にも美術が好きな人が集まっているのでそれぞれが違っていて、やっぱりここにいる人達はみんな美術が好きなんだと思わせてくれた。
デザインでは、紙にコピックを使いイラストを描き、それをパソコンで修正し、オリジナルシールを作るというものだった。私はパソコンで修正をしてシールを作るのは初めてだったけど、私より年上の高校生の生徒、先生方はすごく優しくゆっくり教えてくれた。
この日私は知らない美術についてたくさん知った。今改めて、聞いた話を思い出し、その知らない事を学びたい、知りたい。心からそう思った。
今まで漠然と楽しいと思っていた「描く」という事がここで私の人生を大きく変えてくれると確信した。絶対にここで学びたい、そして将来の基礎をつくり、「私」という個性を大切に生かしてくれるこの学校を目指すことを決めるための、扉を開かせてくれた一日だった。この日から将来へ向けた私の旅が始まるのだ。