中学生の部

佳作

人の死と人の誕生
八幡市立男山おとこやま中学校 1年 齋藤 麗さいとう うらら

 私には今までの経験で人の死と人の誕生について、ほとんど同時に知ることがあった。
 あれは私が小学二年生の時のことだった。私の祖母は病気で入院しており、妹は母のお腹の中にいた。祖母はお見舞いに行ったときいつも笑顔でむかえてくれた。一緒にケーキを食べたり、シュークリームを食べたり、折り紙で遊んだり、たくさん楽しいことをした。「祖母が病気」という現状は変わらなかったが、そんなことも忘れるくらい楽しくて、私は幸せだった。
 そんな時妹は、母のお腹の中ですくすくと成長していた。祖母もワクワクしていただろう。父は祖母の看病で大変そうだったが、もう一人家族が増えるという楽しみもあり、いつも笑顔だった。母はお腹に赤ちゃんがいながらも、いつも祖母に会いたい私と姉と一緒に祖母の病院まで行ってくれた。祖母に会う時間をたくさん作ってくれた父と母には今も感謝している。
 ある日姉が嬉しそうな顔をしながら言った。
「折り紙とかで色んなもん作って、この部屋を可愛くしよ!」
 私はそれに賛成して、折り紙を切って輪にしてつなげたりしてたくさん作った。それを病室にかざって姉の思い通り、「可愛く」できた。祖母はそれを見てにっこり笑顔で笑ってくれて私もとても嬉しかった。その時使った折り紙は今でも置いてあり、見るたびその時の風景が頭をよぎる。また、祖母を喜ばせて笑顔にしたいなと思った。だが、祖母も病気のため、その幸せが「ずっと」続くことはなかった。
 ある日、朝早くから母にたたき起こされた。その理由は「祖母の調子が悪い」ということだった。私は寝起きで面倒くさいと言いながら、ゆっくり病院へ行く準備をした。だが、病院についてから母が涙目になりながら、
「ばあちゃん、ママ達が病院に向かってる最中に亡くなっちゃったって」と言った。私は幼かったので話にあまり追いつけていなかったが、病室に入ってようやく分かった。この時、人の死について分かったことがある。人の死は、人の笑顔を跡形もなく消しさり、今までの幸せをうばうものだと。 祖母の死から、一週間、二週間、時間が進んでもみんなの心の底から笑う笑顔は無かった。
 だが、祖母の死から約二カ月、妹が産まれた。その瞬間、みんなの笑顔が元の笑顔に戻り、もちろん私もとても笑顔になった。人の死は人の笑顔をうばうが、人の誕生はその倍、人の笑顔を作るものだと知った。
 この経験は、今までの中で一番いい「発見」だと思う。

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