中学生の部

佳作

祖父母の野菜
東京都立大泉おおいずみ高等学校附属中学校 1年 大澤 友菜おおさわ ゆな

 私は、小学校中学年の頃に、祖父母の野菜の秘密を発見した。
 私の祖父母は長野県に住んでおり、家の前の畑で野菜をつくっている。そして、その畑でつくられた野菜は毎年、オールシーズン、私の家に届く。私はその野菜に対して、「おいしいな。つくるの大変なのにすごい」と軽い気持ちを持って食べていた。
 しかし、そのような軽い考えは小学校中学年の夏から変わった。私はほぼ毎年、母と夏や春に祖父母の家を訪れる。その年、私は野菜づくりをお手伝いすることになった。その時に「早起きしてもらって大丈夫?」と祖母に聞かれ、六時半くらいだと勝手に思い込んでいた私はその時間を聞いて驚いた。五時だった。
 祖父母は夜明けとともに起き、私たちのために野菜をつくってくれていた。そのことにも感動したが、もっと感じたのは仕事の重労働なことだ。腰を曲げて不安定な土の上にしゃがみこみ、その姿勢で何時間も作業するのだ。しかも、その作業等をほぼ毎日かかさずに続けているのだ。私は、その時祖父母の私への愛情を、心に強く感じた。
 さらに、トマトの収穫作業を手伝っていると母に「友菜は昔トマトが嫌いだったんだよ。でも、おじいちゃん、おばあちゃんのトマトを食べてから好きになって、今ではたくさん食べるよね」と言われた。私は後悔した。こんなにも大変だなんて、私のことを考えていてくれていたんだって、トマトを食べられるようにしてくれた魔法の野菜だったなんて……。知らなかったし、そんなこと考えたこともなかった。
 私は、その時、祖父母の野菜のおいしい秘密を発見した。きっとこのことは、体験していなければ気付かなかったと思う。今でも送られてくる野菜を、毎日祖父母の心の込もったおいしい野菜を味わって食べている。春や夏に訪れた時は手伝いもかかさない。宅配便の姿がインターホンにうつった時、「今日はなんの野菜かな?」とウキウキする。
 これからも、祖父母の野菜を大切においしく食べていきたい。

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