中学生の部

佳作

わたしのあさ
東京都立大泉おおいずみ高等学校附属中学校 1年 遠藤 茶緒えんどう さお

 特等席、れる景色。私はまた眠りにつく。毎日の電車通学、くだりのため大抵たいてい座ることができる。私は、丁度景色が見える窓の前の席が好きだ。空いていたら、いつもそこに座る。
 雨の日も、風の日も、私達は朝早く起きて学校に行かなければならない。布団が自分を放してくれなくても、やるべきことが山積みになって嫌気いやけがさしても。だから、やっぱり息抜きの時間が必要だ。
 私は寝るのが好きだ。寝るというかまぶたを閉じて休むことが。いつもの席に座ってリュックを抱え、そこへ顔をしずめる。抱えたリュックに身をまかせ、リラックスする。そう、電車で。そして、降りる駅が近づいて、ゆっくりと目を開けると、少しずつ周りが見えてくる。窓から見える景色で改めて季節を感じ、太陽にてらされた車内がかすかに染まる。あわだたしい朝の中、このときだけはゆっくりと時間が流れる。
 電車の揺れは、酔うから嫌いだと言う人もいるけれど、人間にとって心地良く、眠たくなるらしい。以前テレビで知った。しかし、小学生の頃の私は、電車そのものが好きではなかった。塾に電車で通っていたときは、スーツの人ばかりで堅い雰囲気がただよい、座っていてもどこか緊張した。そんなこともあり、車内で眠たくなってうっかり寝てしまった、なんてことは、本当に疲れたとき以外ほとんどなかった。
 なぜこんなにも変わったのだろう。
 電車通学に慣れてきた今、今さらながらそう思う。眠れるようになったことは成長とは言えない。だからきっと、それは変化だと思う。心や、考え方、感じ方の。本当にそうだったなら、私はこの変化に感謝する。車内で目を開けた瞬間の、全てが優しく、ゆっくりに見えるあの感覚は、とても幸せな気持ちになれるから。
 朝ベッドから起きるときとは全く違う、ふんわりと、包み込まれるような幸せな感覚。それを感じるために、私は今日もまぶたを閉じる。

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