中学生の部

優秀賞

ハイビスカス
八幡市立男山東おとこやまひがし中学校 1年 井上 真之介いのうえ しんのすけ

 ある日、僕は唐突にカメを飼いたくなった。何故カメなのか?それは、元々魚しか飼ったことがなかった僕が水陸両用の生物にひかれたからであろう。二週間ほど考えた後、近所のスーパーにカメを買いに行った。
 値段はさておき最初の感想は「ちっちゃっ」であった。4㎝未満のそのカメには大きすぎるであろう横幅60㎝、たて30㎝、高さ25㎝の水槽すいそうを用意した。エサもカメ専用。そのうえ、エサの袋には「消化しやすい‼」と黄色の文字で書いてあるものをあえて用意した。
 カメは甲羅こうらを日光に当てて体に付着した雑菌ざっきんを取り除く習性があることは前々から知っているので日当たりの良さそうな場所を探した。やはり一番いいのは外であろう。しかし、その時、ある友人が昔していた話を思い出した。
 その内容は外で飼っていた金魚についてだった。ある朝、その友人が金魚の水槽を洗おうとしたところ水槽にいるはずの金魚が見あたらない。その代わり水が赤くにごっていて魚の尾鰭おびれと思われる物が水面に浮いていたそうだ。僕は言った。
「うん、食われとるな」
「せやな」
 流石さすがにそれは御免なので、水槽を外に置くのはやめて、日当たりのよい自分の部屋に置くことにした。においは大丈夫なのか?と聞かれるかもしれないが、不思議なことに全く臭いはしなかった。鼻がつまっているのか?とも考えたが、そうでもないらしい。何故か分からなかった。
 カメを飼い始めて一ヵ月も経たないうちに、カメが死んだ。干からびて亡くなっていた。死因は、日光浴のために石の上に登ったところ、下りられなくなっていたことのようだ。水換えをするたびにカメが原因の石に登り下りしていたのに何故だろう。そういえばエサもあまり口にしていなかった。調子が悪いならそう言ってくれればいいのに、カメはなくこともしてくれなかった。
 僕は、人がどれたけ感動するといった映画やドラマを見ても感動しない。親や他人にも「涙腺るいせんがない」とあっさり言われる。
 しかし、今回は違った。朝まで居たはずのカメが、もう居ない。形があって動かない。その日の夜は、何故かずっと寝られなかった。
 翌日、カメを埋め水槽も片づけた。カメがいなくなった部屋は少し臭った。不思議なことに、カメも水槽もなくなったのにカメがいた時には分からなかった臭いだけが、ぽつんと一人残っていた。
 カメに亡くなられて五ヵ月が経った。部屋は、マンガで埋め尽くされている。部屋の隣には植木鉢がある。カメを埋めた植木鉢だ。植木鉢からはハイビスカスが元気に咲いている。そういえばカメの名前が決まっていない。まぁ、どちらにせよ、今日も綺麗にハイビスカスは咲いている。


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