小学生の部

優秀賞

あの日の妹
八幡市立美濃山みのやま小学校 6年 廣瀬 美卯ひろせ みう

 「ドキドキ」。私は今、車に乗っている。行き先は病院だ。あの時の気持ちをまだおぼえている。私が五才のとき、妹は生まれた。
 最初は実感がわかなかった。妹が生まれる、ということは初めてだったからだ。生まれるときを見れないのでとびらの前で待つ。私のときとちがっておなかを切らなければいけなかったからだ。生まれるしゅん間を見たかった。でも、見せてもらえなかった。後で見せてもらった妹は、小さく、ほっぺがプニプニしてかわいかった。妹は平均より小さく、軽かった。だから、毎日家で注射をしなければいけなかった。初めは泣いていたけれど、しばらくすれば泣かず、じっと終わるのを待つようになった。私だったらまちがいなく泣いている。妹はえらいと思う。
 だけど妹は、運動がとくいだ。公園のブランコの周りのさくで逆上さかあがりを私よりもさきにやった。さらに逆上りをれんぞくで、足をつけずにやった。私にはとてもできないようなことだ。
 とても小さかった妹が一年生になった年。妹の注射がなくなった。一度注射なしで様子を見ようと言われたらしい。私はうれしかった。しかし、もし次に病院に来て身長がのびていなかったら、少し入院するらしい。その話を聞いた日から、毎日夜布団でこっそり「身長のびろ、背のびろ」と思うようになった。もちろん、こっそりなので家族にも言っていない。家でもたまに妹の身長を測っている。そのときに、少しだけ身長がのびていたときは、かくれてガッツポーズをするほどうれしかった。病院に行くのは冬。ぜったい入院はしてほしくない。

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