中学生の部

佳作

本との出会い
飛騨市立神岡かみおか中学校 2年 蒔田 綾音まきだ あやね

 その出会いは実に衝撃的だった。私の生き方までも左右した。
 私は幼少の頃から本が好きだ。私にとって本とは、日常から離れ、別世界へ旅することであり安らぎそのものであった。
 『屋上のウインドノーツ』を初めて読んだのは小学校六年生の時だった。その頃私は友人との関係に悩み、一人で苦しい日々を過ごしていた。そんな時にこの本に出会った。
 主人公は私と同じで、いつも一人ぼっちでいた。だが、一人の先輩との出会いによって、彼に力づけられ、逆に彼女が彼を支えながら、二人は前向きに自分を変えようと進んでいく。
 どうしてそんなに前を向いていられるのか。私だったら、そんなことはできない……。私には主人公がとても遠い存在のように思えた。性格は似ているのに、何が違うのだろう。彼女がいる本の世界は、私の憧れだった。
 中学生になって読み返した時に、この憧れの世界に自分が少し近づいていると気がついた。中学生になった私は、多分周りの人に、自分から声をかけるようになったのだと思う。朝「おはよう」と声をかけることすらも、始めはどんな反応をされるか恐かった。でも、相手は笑顔で挨拶を返してくれる。もっと頑張れそうだと感じられた。
 あるとき「最近すごく明るくなったよね。変わったよね」と級友に言われた。泣きそうなくらい嬉しかった。この作品で私が一番好きな場面は、主人公が先輩の意志を引き継ぐと決意して、宣言した場面だ。自分を変えようと努力すれば、なりたい自分になれるという希望が一番実感できるからだ。あの憧れの姿に、私は一歩近づいているんじゃないか。私の中で何かが動き出した。
 小学校六年生の私は、まるで自分がその場所にいるかのように、本の中の主人公と同じように悩み、苦しみ、喜んで、そして泣いた。
 物語は必ず幸せになって終わる。でも今、私がいるのは現実、必ずしも誰もが幸せになれるわけじゃない。それでも、ひたむきに頑張ろうと思えたのは、いくつもの前向きな姿勢を本の中で見てきたからだ。中学生になった私は、本で出会った世界を現実にしたいと、強く思ったのだろう。
 今までの自分の考え方や生き方が、ごちゃごちゃとした出口の見えない迷路のようなものだったのに、行く先を柔らかい光が照らしているように感じた。
 本は気づくといつも私の隣にいる。本を読むと憧れを抱く。本を読むと勇気をもらえる。
 本は時に強く私の心を揺さぶり、可能性を広げてくれる。本が生活の中でどれほどの役割をしているのか、私には言い切れない。
 だけど、これだけはいえる。以前の私は、現実から目を背け、本の世界に入り込んでいた。でも、今の私にとって、本は私の日常に寄り添い、励ましてくれるまさに友達のような存在だということである。私は本が大好きだ。


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