中学生の部

大賞

嬉し涙
京丹波町立蒲生野こもの中学校 2年  中 咲月なか さつき

 けんかして泣いて、おもちゃをなくして泣いて、怒られて泣いて。小さい頃の私は、悲しいときだけ泣くんだと思っていた。
 だから、保育園の卒園式のときに父と母が泣いているのが不思議だった。
「なんで泣いているの? 悲しいの?」
 と私がきくと、母は、
「悲しいんじゃないよ。これは嬉し涙。卒園おめでとう」
 と言ってふわっと笑った。父も嬉しそうだった。幼かった私は「うれしなみだ」なんてやっぱりよく分からなかったけれど、あたたかい気持ちになったのを覚えている。
 小学校三年生の春、母のお腹に赤ちゃんがいることが分かった。だんだん大きくなっていくお腹を見て私は、お姉ちゃんになるんだというわくわくした気持ちでいっぱいだった。でも、予定日が近づいて母が入院するとやっぱり寂しかったし、赤ちゃんが元気に生まれてきてくれるかなと不安になった。
 病院からもうすぐ生まれると連絡がきた日、すぐに父と二人で駆けつけた。待合室で待っているときは、不安で不安でたまらなくて心臓がはじけてしまいそうだった。父も顔を強ばらせてうつむいていた。そのときだった。私たちの耳に突然、元気な赤ちゃんの声と、「生まれましたよ」という声が届いた。その声に不安は一気にかき消された。父も顔を上げた。そして言い表せないような嬉しさがあふれて、涙が勝手に出て頬を伝った。私が初めて「嬉し涙」と出会ったときだった。
 その後の面会で、弟の小さい手が自分の指を握ってくれたとき、私はまた泣いてしまった。心の中と同じくらいあたたかい涙だった。


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